動物愛護関連の情報と、独学ピアノの記録。

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灰色の翼持つ美しき者たち 3章

3章  知恵の森

 

私は、羽の黒っぽかった色が薄くなっていること、胸のもやもやが少し軽くなっていることを不思議に思った。

眠り込む前に、剣を取りに行き胸を突こうと考えたっけ。それと引き換えにサタナエルのような姿になることさえも構わないとさえ思った。しかし私は、眠り込む前よりも少し体が軽く感じていた。そのせいで気分も少し良く、胸の痛みも薄れていた。
だけど、だからといって飛ぶことに近づいたわけではないはずなのに、と私は思う。これからどうしよう。森へ?あの森に剣が眠る。私は時々さわさわと音をたてる森のことを思った。今まで特に不思議だとは感じたことはなかった森。だけど何故そのような力を持つ剣が森に眠るのだろう?
その剣とは一体?
私は、森の姿も、そしてサタナエルの言っていた剣についても自分の目で確認したくなってきた。
私は森へ向かうことにした。まだ時刻は正午前。森に行くには十分な時間がある。私は、湖を背にすると、森の方角に向かって歩き出した。
辺り一面は柔らかい黄緑色の若草の生える平原、森はここからまっすぐ歩いたところにある。今日は、そよ風というにふさわしい風が吹き続けていて、歩くのにも苦痛を感じない。私は、剣を見てみたい、一体あの森はなんだろう、とはやる心のままに急ぎ足で森に向かって歩いていった。

 

私は、小一時間ほどで森の前にたどり着いた。森の入り口付近にある、まだまばらな木達がさわさわと音を立てる。その音はいつもよりも優しく響き、まるで私を歓迎するかのようだと思ったその時、葉の表面がプリズム色に輝きはじめた。ここからどんどんと森の奥に進むにつれ、日の光は薄まっていくはずなのに、この入り口から見える、森の奥のほうまでが輝いているのである。
どうして?
私は思わず口に出してつぶやいた。

その時だった。私の耳に声が聞こえてきた。私は思わず辺りを見回した。どこの方角から聞こえてくるのかさっぱり見当がつかない。私は思わず立ち止まって、声に耳を傾けようとする。なんと言っているのだろう、まだ聞き取れないけれど、どうやらそれは森全体が発しているように思えた。なぜなら、音にあわせて、プリズム色に光る木の葉がきらめくのだから。私はそれを見取ると、光る葉に誘われるように森の奥へと歩き進んでいった。

 

さて、どちらの方角に進んだらいいのだろう。森の中へと来たのはいいが、剣のある方角などてんで分からなかった。途中で立ち止まると辺りを見回す。だいぶ森の奥のほうに来たためか、木の葉のさわさわという声のような音も大きくなってきていた。いや、それどころか今もどんどん大きくなってきている。そして音というよりは、私の分かる言葉に近いような……そう思ったとき、私はひとつの単語を聞き取った。

……剣
それは確かにそう聞えた。私は、声を聞き取ろうと耳を澄ます。そうするうちに、それははっきりと私に分かる言葉になったかと思うと、私に直接話しかけてきているように思われた。

 

 ――この森の力をつかさどる剣。この森の力の一部

 

私はその声を聞いて思わず問い返す。

「この森はいったい何なのですか?そしてあなたは?」

一瞬プリズム色のきらめきが止まり、それと共に静寂が訪れた。
そして、その声は答えた。

 

――私は、この森そのもの。あなたにもうひとつの真実を見せてあげる。

 

その声がそう言うと、一瞬の静寂が訪れた。またプリズム色のきらめきが止まる。そして、木の葉全体が若草色に輝きだしたかと思うと、若草の生える平原を映し出す。そして、そこに映ったのは、いつも湖に映っているはずの私の姿だった。だけど、湖に映っているのとは違い、見たことのない私の姿だった。
走っている私の姿。
少しだけ飛べた満足感でぐっすり眠る私の姿。
そして、そんな私の気が付かぬところで、ふわりと舞う木の葉。

 

――そして、今のあなたの姿です。
木々はそう言うと、私の姿を映し出す。そこに映る羽はいつもの白に近い灰色?、いや、輝いていて銀色に見えた。
湖で見えた肩の辺りの獣の毛のようなものも見えない。
「どうして湖で見えた姿とは違うんだろう。」
私は思わず口走っていた。
木々は答える。
――あの湖は、あなた自身の姿をそのまま映すものではなく、むしろ、あなた自身から見たあなた自身の心や感情の状態を映し出すのです。あなたはサタナエルに出会った後に自分の姿を見たのですね。そうであれば羽だって黒っぽく映ります。

私は木々がサタナエルを知っていることに驚き尋ねようとしたが、木々は話し続ける。
――だけど、心っていうのは、時間がたてば変わるものなんです。サタナエルに出会うことで絶望しかけた気持ちも時間が立てば、あなたが望もうとそうでなかろうと少しづつだけど他のものに触れることにより形を変え癒えていく。もちろんなかなか癒えない傷もあるけれど、ここに映る姿はあなたが絶望しているのではないことを示しています。あなたは、サタナエルの言葉に疑念を持った後に、自分の目で確かめたいと思った。そしてここを訪れた。だからサタナエルに出会った後に見た心より、朝方起きてから見た心の方が白くなっているのですよ。
私は自分の羽がだんだんと黒くなっていっているわけではないことに少しほっとすると共に、ずっと頼ってきたあの鏡が常に「真実の全て」を映すものではなかったことにがっかりした。そのことを見透かすように木々は、私に優しく話しかける。

――心の真実を全て映す鏡などありませんよ。サタナエルはあなたのことをまがまがしい姿のサタナエルに似てると言ったが、ここではそれどころかあなたの羽は、サタナエルの嫌う銀の光に満ちた羽として映ったのを今ごらんになったでしょう。これは私達の目から見たあなたを映し出したものにすぎませんが、同時に、サタナエルから見たあなたもサタナエルの目というものを通して映したものに過ぎないのです。私達から見たあなたは、最初に映したようにあなたが草の上を駆け回り、飛ぼうとする映像そのものの美しさを持ち、輝いて見えた。銀の光に満ちて見えるほどにね。そしてそんな光こそはサタナエルが嫌い、消してしまおうとしているものなのです。
私は、ほっとすると同時に疑問もわいてくる。
「どうしてそんなに私のことを?」
――私はあなたをずっと見守っていました。あなたがこの世界に生まれ落ちサタナエルに触れ、そして”目覚める”まで。私はこの世界を知り導く知恵、だからここは知恵の森と呼ばれるのです。

 

 
(続く)

 

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