動物愛護関連の情報と、独学ピアノの記録。

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灰色の翼持つ美しき者たち 4章

4章 サタナエル

 

私は、鏡のことを知りほっとしたものの、次から次に湧き上がってくる疑問にまだ頭の中が混乱したままだった。
「サタナエルというものの告げた剣。それはここに眠るのですか?サタナエルとは一体……」
木々は答える。
「サタナエルに出会ってしまったものは、サタナエルの言葉にそそのかされ、ここに来るものもいます。あなたも、半分はそうであったように。だけど、サタナエルはあなた自身が選ぶ部分まではコントロールできません。サタナエルがあなたの一部であったとしても、あなたそのものにはなりえないのですから。だからサタナエルは全知全能ではないのです。だから森から剣を奪ってきて、あなたを突き刺すことはサタナエルには出来ない。」
「サタナエルは剣で自分の左胸を突き刺せばサタナエルのような羽を持つ姿に生まれ変わると言うのです。」
「それはその通りです。確かにサタナエルのように空を謳歌し飛びまわることも可能です。その剣は、そのくらいの力を持つのですから。私はあなたに今からサタナエルについてお話します。そして、その剣についても。」
私は、どきどきした。木々はまた一瞬プリズムの光を鎮めたかと思うと、先ほどより落ち着いた蒼い光で木の葉を満たし、ゆっくりと話し始めた。

 

それは、サタナエルの物語である。

 

サタナエルのすむ場所はここよりずっと暗い世界。
草木なんて生えず暗く湿った地面を持つ場所。
だから、サタナエルがここにやってきても光降りそそぐ間は動くことが出来ない。
暗闇の中に生き、暗闇を支配する。
暗闇の中ではサタナエルは自分の姿を見ることもかなわない。
自分の姿を見ることが出来ないということ、それは何を意味するのか。
心の盲目。
明るい時刻は自分の姿が見えるだろう。
だけど、サタナエルの「世界」は暗闇だから自分の姿を見ることが不可能なのだ。
サタナエルは傲慢な態度で、自分の知をひけらかす。
彼は英知、栄光、力、名において自分を偉大だと思っているのだから。
「あの人」よりも。

 

しかし、サタナエルはかつてからそうだったわけではなかった。
サタナエルは天使として最高の位を意味する6枚の翼よりもさらに多い12枚の光輝く白い翼を与えられていた。
それは、サタナエルが「あの人」からとても愛されている、特別扱いされているという印であった。
そして、サタナエルも「あの人」を愛していた。

 

そんなある日、「あの人」は人間を創ることにした。
人間は「あの人」によって、塵から映し身を創られ、鼻から息吹を捧げられた。
息を吹き入れられた魂。それが祝福である。
天使は炎から創られたから祝福は受けていなかった。

天使は天の使いとして「あの人」に創られたときからずっと、忠誠を尽くしてきた。
それなのに、「あの人」はエデンという土地を人間に与え、サタナエルには与えなかった。

サタナエルは激しく嫉妬し「あの人」に問う。
それは、天使が決してしてはいけないことであり、「あの人」に対しては持ってはならないとされている疑念の感情であった。
だけどサタナエルは「あの人」に問わずにはいられなかったのである。
「どうして、人間なんかにエデンを与えたのですか?どうして私にはくれなかったのですか?」
「あの人」は答えなかった。
それはもう、天使としての最大の罪を意味していたから。

サタナエルは大罪を犯したと自分で知りつつ、それでも「あの人」を憎まずにはいられなかった。
そしてついにサタナエルは、愛するが故の苦しみに耐えられなくなり、「あの人」を、そして愛そのものを拒絶してしまった。

 ……あの人など私には必要ない。そう、もともと必要なかったんだ。私は、あの人が私に何も与えてくれなくても持っているのだから。力も、栄光も、そしてまた、それらを自分で手に入れる力そのものを。今、そのことに気が付いた、それだけなんだ……

 

本当は必要とされたかった。愛されたかった。「あの人」の傍にいたかった……

サタナエルはそんな思いを自ら葬った。自らの持つ愛ごと。

サタナエルの心の奥のどこかで消えない、体ごと引き裂くような痛みからくる叫びは強大な闇を作り出していく。サタナエルの様相はみるみるうちに変わっていった。光り輝く12枚の翼はボロボロになり、体には獣のような毛が生えだす。

サタナエルは、天使達に主である「あの人」ではなく自分をたたえ、自分の命令に従うよう要求する。自分の力を示すために。そして、一部の天使達はサタナエルの側についた。

「あの人」はそんなサタナエルの傲慢さを許さなかった。
「あの人」はサタナエルを光の国から追放した。
このときから、光と闇の対立が生まれ、サタナエルは、天使の印である「エル」を省いた名で呼ばれることになったのである。
その名は「サタン」。別の名をルシファーという。
そして、サタンがかつて愛した「あの人」の名は神・創造神と呼ばれるものだった。


地底に住み、天を憎み、光を目指そうと望むものを絶望させ、地底に引きずり込もうとする淋しがりや。
それがサタンの姿。

サタンは淋しがり屋、甘くささやき欲望は全てかなえてくれる。
弱みや欲望につけこんでは取引を申し出る。
サタンは心の空洞を埋めるものが欲しかった。
だけど、いくらあがいてもたどりつけない。
だって、サタンは天を憎んでしまったから、もう天からの光を愛を拒否してしまったから。
だからサタンはいつだって淋しい。
そしてその淋しさをも拒否するために、傲慢な態度をとり、他者を支配しようとする。

愛がなくても全ては可能だと、力を見せつけてそそのかす。
英知、栄光、力、名はあの人にも勝るんだと。
サタンはかつて「あの人」を愛していた、そしてその愛が裏切られたと思った。
かつて天使だったサタンは、人間のようにあの人の息吹で作られ祝福されたのではないのだから。
その上、あの人は人間だけにエデンを与えたから。
サタンは人間に嫉妬した、本当は心の奥で人間がうらやましいと思っていた。
だから、あの人から作られた人間は全て自分の支配下につけようと思った。
サタンは自分には愛をくれなかったあの人を殺めようとした。
存在を否定するために。

サタンの心は、闇の中に封じ込められた。

「あの人」によって、いや、サタン自身によって闇の中に閉ざされてしまった。

愛を拒否するように、バタンと心の扉を閉ざしてしまった。

サタンは今なお闇の中にいる。
闇の中で、自分の姿さえも見ることのできない盲目のままで。

 

(続く)

 

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コメント

予備知識として。
サタナエルという呼び名はユダヤの伝承の呼び名です。
最初からルシファーと書くといかにもだったので、こっちを使わせてもらいました。
そして、どうやって人間や天使がつくられたかというのは、「旧約聖書」からです。

その他の部分は、勝手なオリジナルであり、宗教とは関係がなくて、「蒼鳥 庵の人間観」を描くに都合がよかったからそのあたりの知識を使わせてもらったに過ぎません。
投稿した後に、サタナエルと「あの人」の問答を付け加えました;
今修正して投稿しなおした。
先に読んでしまった方すみません; ;
もうひとつ修正。
羽の色が明確でなかったので修正しました。
主人公の羽は常に灰色です。黒っぽい灰色から白っぽい灰色まで変化するということで。そのために、一番最初の出だしを、白に近い灰色にしました。
そうしないと、白=天使、黒=サタン、という明確な設定にならなくなり、主人公がなんなのか分からなくなるから。
愛ゆえに恨む・・愛そのものまでも・・(T-T*)なんか心が痛いわ。。
ふぁみさん・やっぱりそこ、書き加えてよかった^^
やはり、そのへんの心情は説明したほうが、この物語に深みが出るということをとても実感したよ。
というわけで、また以下の記述を書き加えました。

『サタナエルは大罪を犯したと自分で知りつつ、それでも「あの人」を憎まずにはいられなかった。そしてついにサタナエルは、愛するが故の苦しみに耐えられなくなり、「あの人」を、愛そのものを拒絶してしまった。
 ……あの人など私には必要ない。そう、もともと必要なかったんだ。私は、あの人が私に何も与えてくれなくても持っているのだから。力も、栄光も、そしてまた、それらを自分で手に入れる力そのものを。今、そのことに気が付いた、それだけなんだ……
サタナエルは、天使達に主である「あの人」ではなく自分をたたえ、自分の命令に従うよう要求する。自分の力を示すために。』

そして、ラストを書き換え。
『サタンの心は、闇の中に封じ込められた。
「あの人」によって、いや、サタン自身によって闇の中に閉ざされてしまった。
バタンと扉を閉ざすように。
サタンは今なお闇の中にいる。
闇の中で、自分の姿さえも見ることのできない盲目のままで。』
自分自身、こうやって書きながら、細かに描写するにつれ、サタンの気持ちが具体的に自分の中に入っていくところがあって、「ああ、なんて人間的なやつなんだ」、ってあらためて思ったりした。

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