そうなると、「引渡し時には視察をする」という決まりが元々あり、里親希望者はそれを了解して申し込むというボランティア団体の力を借りることになるが、よほどのことでない限り、忙しい彼らを頼りたくは無い。そのことで、他の動物の保護が滞るようであれば、自分自身の「1匹でも多く助けたい」という思いと反することになってしまう。
そういうわけで、出来れば保護動物は自分で世話をするのがベストであると思っていた。しかし、自分の生活がままならなくなるのであれば、頼るしかなくなってくる、そう思っていたとき、ある人から、「犬より猫が楽」という話を聞き、全くそうではないか!と思った。今は、時期が時期で、ひなたと重なってしまったことと、木陰が負傷しているために隔離していることで世話が大変なだけではないのかと。
それに、今現在、猫トイレなどの備品や病院代にカネがかかっているものの、猫2匹でも凪サイズの犬以下しか、メシは食わないではないか、元々犬を引き取ろうと考えていたことを思い出し、長期的にみれば、かかる金額は通常の状態で凪サイズの犬2匹>凪サイズの犬1匹と猫2匹のはずだ。そうなると、木陰がある程度回復して、この3匹の関係が上手くいきさえすればどうということはないはずだ。
そう思って、ケージから木陰を出してみる。驚くことに、木陰の驚異的な回復力で、すでにひなたとのネコルールでの取っ組み合いには耐えれるほどの体力がついていたのか、なんと木陰はきっちりひなたに反撃もした。一方的にやられるようなら取っ組み合いは早いと思ったのだが、これならもういけるのではないか。
しばらく見守っていると、取っ組み合いをした2匹、ひなたとこかげはすぐにすっかり仲良くなった。
留守番のとき、甘ったれひなたの良い遊び相手になるということで、これを機にこのまま木陰も同居することに決める。凪は、子猫たちに攻撃するということはないから、現在こかげは凪を多少警戒しているものの、すぐ慣れるだろう。

キャットタワーの下でくつろぐひなたとこかげ
そして、昨日の夜のこと、僕はこかげをひざに乗せてみた。今まで、どこかびくびくしていたこかげが、メシをやろうとするときに初めて、催促するかのようにニャーニャー鳴いていたから、そろそろ慣れたのではないかと思ったことがきっかけである。そんなわけで思い切って抱き上げてひざに乗せたわけだが、すると、なんと木陰が「ゴロゴロ」言って目を閉じ眠ったのである。これは猫がくつろいでいるか、逆に不安なときに出す音だが、不安だったらそのまま眠るということはないだろう。木陰はくつろいでいるのだ!これは、本当に嬉しくて、ここ数日の苦労が全て報われたと思った。
手作りメシも、犬が動物性・穀物・植物性のものを1・1・1の割合、猫が3・1・1の割合にすることでいけるし、よろこんで食べてくれる。おやつは無添加無着色で人間用と違い塩分も加えてなく、原型をとどめていて安全な「棒たら」でよい。この「棒たら」を与えていると、歯磨きがほとんど必要なくなるため、全員が好んでくれて、よかったと思った。
面白かったのが、凪が棒たらを食べているところに猫たちが横取りしようとくると、凪は怒るのだが、かじり飽きてからだと怒らないのである。また、メシの場合も、3匹並べてメシを与えた場合、口の小さい子猫たちと比べると、さすがに凪でも食べるのが一番早くなるのだが(凪は犬にしては食べるのが非常に遅い)、決して凪は子猫の食べ物に手を出さず、僕が子猫たちが残したものを凪に与えてはじめて食べだすのである。これは、本当に本当に助かって、凪をものすごく褒めた。
また、凪には30センチくらいもある、でかい「棒たら」をおやつとして与えるのだけれど、子猫たちは、まず凪だけに与えたおやつにしてもぶんどろうということをしなくなった。御犬の社会は、食べる順番が決まっていて、それを破ってはならないわけで、それで猫もしつけられたようであった。「棒たら」というおやつ、最初はハサミで切ってやっていたため、猫のために小さいものも必要かと思っていたけれど、今は凪がかじりあきたものを2匹が食べるため、必ずしも小さいものまで買わなくても大丈夫そうだ。
食べ物の取り合いにならないことは便利なことである。凪、しつけてくれてありがとう、と思ったのがこのことであった。これから楽しく3匹を観察できそうである。

やさしいやさしい凪の表情