それは「負の罰を与えるしつけ」を出来るだけ少なくすることであった。そして、とにかく「褒めて褒めまくって」しつけなければならなかった。ジャックラッセルテリアは決して服従心が強い犬種ではないために、人に気に入られること・人が望むことを進んでしようとする性質が少ない。つまり、「命令に従うことで喜んでもらう」という動機が少ないために、下手に叱っても、ただ「嫌なことをされた」という記憶に終わってしまうことが多いようだが、凪にはとりわけ強くそういうところが見られた。人間の子供に例えると、先生に叱られた→今度は叱られないように気に入られるように頑張る、ではなく、叱られた→先生嫌い、学校行かないとなってしまうタイプだと思う。こう書くと後者が打たれ弱い子供のように思われるかもしれないが、ジャックラッセルテリアは、ここでいうところの「学校」に行かなくても自活能力が犬の中では残っている方だからこういう性質になっていると言えると思う。
狩りの出来る犬JRTらしく、凪も、放していい場所で放すと、亀・ヤモリ・コガネムシ・バッタなど取ってきてくれた。もちろん毎回いらないということを伝えようとがっかりした仕草をしているうちに、とらなくなってくれたが、このように、人間がいなければ生きて行けない犬の中では狩りという自活能力が残っている方となると、性質が一般的に「猫の性格」と言われるものに近くなってしまうのも理解出来るように思った。体もぶちねこのようで、「あれ猫だよね、クスッ」とか散歩中に子供に笑われたこともあったが、体の模様だけでなく、凪は、かなりのマイペースで、勝手に色々と探索するのが好きであった。興味のあることとないことがはっきりしていた。最初はそんなことが分からず、凪を叱ったものだったが、ただ嫌がって、ソファの下に逃げ、しばらく出てこなかったりした。そのまま頑固にいじけ続け、メシも食わないということまであった。無論、叩いたとかではない。
日本で犬をしつけるにあたって、未だに「叩く」人がいるが、それはジャックラッセルでなくとも論外である。犬の流儀で、手を使って叩くという方法は母犬がとることはないために、いわれのない恐怖を与えてしまい、人間の手そのものが恐怖の対象になってしまうらしい。
(実は、最初にブログを書いていた頃は、凪はもう少し従順だと勘違いしていたのだけれども、すぐ裏返って腹を見せる件は前回書いたように、純粋な服従心からではなく、構って欲しいという気持ちからだったりと、「寂しがりで利にさとい」凪の性格が一見そう見せただけであった。)
さて、そんな凪の性格を少しずつ理解しながら、最初に取り組んだのが「噛みの矯正」だった。
これも、元々猟犬種であるもに、噛む事自体を禁止しても効果はない。そして凪は、噛むものをただ与えるくらいでも物足りず、ダンボールを何度も組み立てて与え、破壊させて遊ばせた。また、引っ張り合いの遊びで「ハナセ」というコマンドを覚えさせ、離したらごほうびを与えて大げさに褒めるということを繰り返した。この最中に手を噛んだら遊びをやめてしまうのだ。このしつけの方法は、その頃「語ろ具」というところで「ジャックラッセルテリア飼育奮闘気」を書かれていた史嶋さんに相談したり、その記事から知ったことであるが、凪にぴったりだったのか面白いくらいに上手くいった。史嶋さんは、現在「ドッグ・アクチュアリー」に寄稿されている。
史嶋さんの記事(本人の了解を得て紹介させていただいてます。)
以下「史嶋さんの記事」より抜粋しましたが、より詳しくは史嶋さんの記事そのものをご覧下さい。
命令で咬み着かせる、命令で放させる、命令で咬みつきを止める訓練
1.犬に咬んで遊んでも良いロープおもちゃを生き物の様に動かして見せ、モッテと命じて咬ませ、飼い主と犬でひっぱりっこする。手を咬む危険性のある犬の場合は鉄工用手袋で手をガードする。おもちゃを無視して手を咬むようなら訓練を中止してしばらく犬を無視してから訓練を再開する。
2.咬み着いて所有欲が高まり、犬が本気でおもちゃを奪おうと全力で引いてきたら、おもちゃごと犬を手元に引き寄せ、ハナセ(ダセ)と命じながら、もう一方の手の指を犬の耳の穴にそっと入れる。または耳に強く息を吹き込む。この時、興奮した犬に咬まれない様に注意!
3.犬は耳の穴を強く刺激されると、咬みついているものを反射的に放す。
4.犬が咬んでいるおもちゃを素直に放したら、おもちゃを隠し、ヨシヨシ・ハナセと褒め、スワレを命じ、手のひらを犬の鼻面に向けてマテと命じ、しばらく静止させ、犬が短時間でもおとなしくできたら、ヨシヨシ・マテと褒めながらご褒美を与える。
5.1に戻り、再びおもちゃに咬みつかせ、しばらく遊んでから、ハナセの声符と耳の穴を刺激して放させる事を繰り返し、ハナセといわれたら咬んでいる物を放す、と言う条件反射を作り出す。
6.訓練を1週間くらい繰り返すと、犬はハナセと言って頭の上に手をかざすだけで、条件反射によってすぐに放す様になる。この訓練を毎日犬がある程度疲れるか、飽きるまで時間かけて続ける。
7.最後はおもちゃを見せて、咬みつこうとした時に、手を犬の頭の上にかざし、ハナセと命じ、最初から咬ませない様にする。この段階で声符はハナセからヤメに入れ替えても良い。
8.手をかざしてヤメと命じる→咬みつくのをやめる→飼い主に褒めてもらえる、と言う条件反射が完成すれば、他の犬と取っ組み合いをやっていても、ヤメやハナセの命令で取っ組み合いを中止して呼び戻す事もできる様になる。
9.また、ヤメ~マテまでの訓練が完成すれば、犬が他の犬や人に咬み着きそうになる前に、ヤメで咬み着きを止め、マテで静止させる事も出来るようになる。ツケ(脚側停座)が出来る犬なら、ヤメ・ツケと命じても良い。
(抜粋終了)
あとは、「持ってこい」のリトリーブ。ボールを投げて持ってきたらごほうびというやつだ。ボールのリトリーブは教えなくても最初から出来たので大変楽だった。
![image1383910[1]](https://blog-imgs-36-origin.fc2.com/i/o/r/ioriaotori/201009211347548a9.jpg)
![image4171445[1]](https://blog-imgs-36-origin.fc2.com/i/o/r/ioriaotori/20100921134754858.jpg)
(リトリーブを覚えさせる過程で、「マテ」と「キャッチ」も習得させた。このとき生後5ヶ月。)
これらのことで、かなりの運動量を稼いできたので、歩きで3時間と言われるJRTの運動量を確保できたのである。この手の運動を毎日繰り返すことで、凪は夜に家の中を走り回ったりすることなく、「くふーくふー」という小さな寝息や「クポ」という謎の寝言を言いながら、腕枕もしくは同じ枕で頭を寄せてぐっすり眠ってくれることになったのである。

つづく(次回予定・凪の犬付き合い)